
反復着床不全検査
反復着床不全検査
「反復着床不全(RIF)」とは、体外受精や顕微授精などの不妊治療において、複数回にわたり良好な胚を子宮内に移植しても着床が成立しない状態を指します。具体的な定義は諸説ありますが、一般的には3回以上の胚移植を行っても妊娠に至らない場合に診断されます。
着床とは、受精卵が子宮内膜に付着し、そこから胎児へと成長を始める大切なステップです。着床がうまくいかないと妊娠は成立しません。反復着床不全は、患者さまにとって精神的・身体的にも大きな負担となり、治療への不安や焦りを強める原因となります。
反復着床不全の原因は多岐にわたり、ひとつだけでなく複数の因子が絡み合っている場合が多いです。主に以下のような原因が考えられます。
子宮内膜の異常
子宮内膜の厚さが十分でない、質が悪い場合、受精卵がしっかりと着床できません。
子宮の形態異常
子宮筋腫や子宮腺筋症、子宮ポリープ、子宮奇形などが着床を妨げることがあります。
子宮内膜炎や慢性的な炎症
細菌感染などにより子宮内膜が炎症を起こしていると、着床環境が悪化します。
染色体異常
受精卵の染色体に異常がある場合、正常に発育できず着床がしづらくなります。
胚の質の低下
年齢や卵巣機能低下によって胚の質が低下し、着床しづらくなることがあります。
免疫異常
母体の免疫が受精卵を異物として認識し攻撃してしまう場合があります。例えば、自己免疫疾患や免疫応答の異常、自然免疫細胞(NK細胞)の過剰活性などが挙げられます。
血液が固まりやすく、子宮内の血流が悪いと胚への栄養供給が妨げられ、着床が難しくなります。
黄体機能不全など、着床に重要なホルモン分泌が不足すると、子宮内膜の着床環境が整いません。
反復着床不全が疑われる場合、その原因を特定し、適切な治療を行うためにさまざまな検査を行います。
過去の妊娠歴、治療歴、生活習慣、ストレスの有無などを確認します。
血液検査で卵巣機能やホルモンバランスをチェックします。特に排卵に関わるホルモンや黄体機能の状態を確認します。
経膣超音波検査
子宮の形態や内膜の厚さを調べます。
子宮鏡検査
子宮鏡で子宮内を直接観察し、ポリープや筋腫、炎症の有無を確認します。
子宮内膜生検
内膜の組織を採取して炎症や細菌叢の異常を調べます。
ERA検査(子宮内膜着床能検査)
子宮内膜が着床に最適な状態か、着床時期のズレがないかを遺伝子レベルで分析します。
Th1/Th2検査、自然免疫細胞(NK細胞)の活性化、自己抗体の有無を調べます。特に抗リン脂質抗体症候群など、血栓症を起こしやすい自己免疫疾患の検査が重要です。
夫婦双方の染色体異常がないかを調べることもあります。胚の染色体異常リスクを推定する参考になります。
血栓症のリスクを調べるため、血液の凝固能を調査します。
初診相談・問診
まずはお話を伺い、検査内容や流れについてご説明します。
血液検査・超音波検査
基本的なホルモンや感染症検査を行い、子宮の形態も確認します。
必要に応じた追加検査
子宮鏡検査や免疫検査、染色体検査などを行います。検査結果によっては外部専門施設での検査を提携する場合もあります。
検査結果の説明と治療計画の立案
検査結果をもとに、患者さま一人ひとりに最適な治療プランをご提案します。
ポリープの切除や筋腫の治療、子宮鏡手術などを行います。慢性子宮内膜炎が認められた場合は抗生物質治療を実施します。
免疫抑制療法や抗炎症薬、抗凝固薬を用いることがあります。ただし効果には個人差があり、専門医の判断が必要です。保険適用外のものもあります。
黄体ホルモン補充療法などを行い、着床環境を整えます。
抗凝固薬の使用で血流改善を図ります。
染色体検査を踏まえ、胚の選別や胚盤胞のグレード管理を行います。必要に応じて着床前診断(PGT)を検討します。
反復着床不全検査は、3回以上の胚移植を行っても妊娠に至らない場合に検討されますが、不安が大きい場合や過去に流産歴がある場合は、早めに受けることもおすすめします。
検査は身体的・精神的・経済的負担がかかることもあるため、担当医とよく相談の上、最適なタイミングを決めましょう。
原因が特定できる場合もあれば、明確にわからない場合もあります。その場合でも、着床環境を整える治療や生活習慣の改善を行い、妊娠成功に向けてサポートいたします。
血液検査や超音波検査は痛みはほとんどありません。子宮鏡検査や内膜生検は多少の違和感や痛みを伴うことがありますが、鎮痛剤を使用して対応可能です。
検査内容によりますが、一般的に1〜2週間程度で結果が出ます。詳細はご説明時にお伝えします。
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