
不育症検査
不育症検査
不育症とは、「妊娠はできるけれど、流産や死産を繰り返してしまう状態」のことをいいます。医学的には、2回以上の自然流産・死産・早産を経験した場合に不育症と診断されることがあります。特に胎児の心拍が確認された後の流産や、妊娠中期以降の死産を複数回経験された方は、専門的な検査を受けることが勧められます。
日本では、妊娠の約15%が流産に至るとされており、2回連続で流産する確率は約4%、3回以上繰り返す確率は約1%です。決して稀なことではなく、多くの方が同じ悩みを抱えています。
当院では、妊娠を望むすべての方が安心して出産を迎えられるよう、不育症に対する正確な検査と丁寧なサポートを提供しています。
不育症の原因は一つとは限らず、さまざまな要因が関与している場合があります。主な原因は以下の通りです。
子宮の形態異常
(子宮奇形)
子宮の形に異常があると、胎児の発育に支障をきたす場合があります。代表的なものには中隔子宮や双角子宮などがあります。
ホルモンの異常
甲状腺機能異常(甲状腺ホルモンの過剰または不足)や高プロラクチン血症など、ホルモンのバランスが崩れることで、妊娠の維持が難しくなることがあります。
血液凝固異常
(抗リン脂質抗体症候群など)
血液が過剰に固まりやすい体質(血栓傾向)では、胎盤への血流が妨げられ、流産や胎児発育不全のリスクが高まります。自己免疫疾患の一種である「抗リン脂質抗体症候群」が原因となることもあります。
夫婦の染色体異常
(均衡型転座など)
夫婦いずれかが「均衡型転座」などの染色体構造異常を保因していると、受精卵が正常に成長できず、流産に至ることがあります。
感染症
クラミジアや子宮内感染などの細菌感染により、胎児に悪影響を及ぼすケースもあります。
原因不明
検査を行っても原因が特定できない「原因不明の不育症」も存在します。しかし、その場合でも適切な妊娠管理によって出産に至るケースは多くあります。
不育症の原因を特定するためには、幅広い視点からの検査が必要です。当院では以下のような検査を実施しています。
子宮形態検査
(子宮鏡・超音波・MRIなど)
子宮内部の形態を評価し、ポリープや中隔などの有無を確認します。
ホルモン検査
血液検査により、甲状腺ホルモン、プロラクチン、黄体ホルモンなどのバランスを評価します。
血液凝固系検査
抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン抗体、ループスアンチコアグラントなど)や第12因子、プロテインS・C活性などを調べ、血栓傾向の有無を確認します。
染色体検査
(Gバンド法)
夫婦それぞれの血液から染色体を検査し、構造異常の有無を調べます。
感染症検査
クラミジア、サイトメガロウイルス、風疹ウイルスなどの感染症に関する抗体の有無を確認します。
免疫学的検査
自己抗体(抗核抗体、抗SS-A抗体など)の有無を調べ、免疫異常の可能性を評価します。
初診・カウンセリング
これまでの妊娠歴や流産回数、既往歴などを詳しくお伺いします。患者さまの気持ちに寄り添いながら、検査方針を立てます。
検査のご案内
必要な検査内容とスケジュールをご説明し、ご本人の同意のもとで検査を実施します。
検査実施
検査は月経周期や体調に応じて数回に分けて行う場合があります。
結果説明・治療提案
検査結果をご説明し、必要に応じて治療方針(内服、手術、免疫療法など)をご提案します。
不育症と診断された場合でも、原因に応じた治療を行うことで妊娠継続率は高まります。たとえば、抗リン脂質抗体症候群が見つかればアスピリンやヘパリンによる治療が行われますし、子宮奇形であれば子宮形成術が選択肢となる場合もあります。
また、ホルモン異常に対しては適切な薬物療法、免疫学的異常には免疫抑制療法など、個別の状況に応じた対策が可能です。
2回以上の流産・死産を経験された方は、なるべく早い段階で検査を受けることをお勧めします。年齢や妊娠希望の時期によっても検査タイミングは変わるため、ご相談ください。
一部の検査(例:抗リン脂質抗体や甲状腺機能検査など)は保険適用となる場合がありますが、染色体検査や特殊な免疫検査などは自費となることがあります。詳細は初診時にご説明いたします。
多くの方が治療を経て無事に出産されています。不安を抱えず、まずは専門医にご相談ください。
流産を経験することは、身体的にも精神的にも非常につらい体験です。「なぜ自分だけが」「どうして続けて起こるのか」と自分を責めてしまう方も少なくありません。
しかし、不育症は原因を知り、適切に対応すれば、妊娠・出産の可能性を高めることができます。私たちは、不安に寄り添いながら、一人ひとりに合った治療とサポートを大切にしています。
どうか一人で悩まず、私たちにご相談ください。赤ちゃんをこの腕に抱ける日まで、全力でお手伝いします。
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