ピル・ミレーナ・緊急避妊薬とは

「ピル」「ミレーナ（IUS：子宮内避妊システム）」「緊急避妊薬（アフターピル）」は、女性の年齢やライフスタイルに応じて選択できる避妊および月経管理の方法として広く活用されています。これらは単なる避妊手段にとどまらず、月経困難症、月経前症候群（PMS）、子宮内膜症などの治療にも効果が期待されており、医療機関での適切な処方や管理のもとで、女性の健康維持や生活の質の向上に大きく貢献します。

治療・予防手段が用いられる背景

これらの治療・予防手段が用いられる背景には、以下のような女性のライフイベントや健康状態、ライフスタイルの変化が関与しています。

• 妊娠を希望していない時期に、確実な避妊を行うため（ライフプランに沿った妊娠のタイミング調整や、仕事や学業との両立など）
• コンドーム破損や避妊法の使用忘れなどにより、緊急避妊の必要が生じた場合
• 月経困難症、月経前症候群（PMS）、過多月経、子宮内膜症などの婦人科疾患に伴う症状の緩和や治療目的
• 旅行や試験、スポーツイベントなど、特別な予定に合わせて月経日をずらしたいときの月経移動や周期調整

治療選択の主な理由

月経痛がひどくて日常生活に支障が出る、周期が不安定で妊娠のタイミングが分かりづらい、過多月経で貧血気味、PMSで心身のバランスが崩れる、といった月経にまつわる悩みは少なくありません。こうした症状を薬で和らげたい、妊娠をコントロールしたいという希望に応えるのが、ピルやミレーナといった治療法です。
緊急避妊薬（アフターピル）は、避妊を行わなかった場合や、避妊方法が正しく機能しなかった性行為のあとに使用される薬です。「望まない妊娠を避けたい」「避妊に不安がある」といった緊急の場面で使用されます。

• 月経痛が強く、毎月寝込んでしまう
• 月経量が多く、貧血気味でふらつくことがある
• PMSでイライラや気分の落ち込みがつらい
• 月経不順で妊娠のタイミングが計れない
• 生理日をずらしたい予定がある
• 避妊を確実にしたい
• コンドームが破れた／使えなかった
• 緊急避妊薬の使用が必要な状況になった

ひとつでも当てはまると感じた方は、ぜひ一度ご相談ください。ご自身の体の変化に気づくことは、健康を守る第一歩です。早めの対応が、安心した毎日につながります。

検査・診断

処方や装着を安全かつ適切に行うために、以下のような診察や検査を実施しています。

• 問診（既往歴、生活習慣、月経周期、妊娠希望の有無など）
• 血圧測定、体重測定
• 婦人科診察、超音波検査（子宮の状態確認）
• 血液検査（必要に応じて）

これらをもとに、安全に処方・挿入できるかを判断します。

使用法

ピルには、目的や使い方に応じて2つのタイプがあります。

ピルには、目的や使い方に応じて2つのタイプがあります。

期待できる効果（LEP・OC共通）

• 強い月経痛の軽減
• 月経不順や周期の安定化
• 経血量の減少による貧血の改善
• PMS（月経前症候群）の症状緩和
• ニキビや肌荒れの改善
• 月経日の調整（月経移動）
• 子宮内膜症の予防・治療
• 子宮体がん・卵巣がんリスクの低下、さらに大腸がん発症頻度の減少

処方可能なピル

副作用について

• 初期には、頭痛・吐き気・不正出血などが見られることがありますが、多くは継続により改善します。
• 稀に、重篤な副作用として「静脈血栓塞栓症」があります。特に服用開始から3か月以内や、喫煙・肥満・年齢の高い方では注意が必要です。兆候として、激しい頭痛、視力障害、言語障害、腹痛、足の腫れや痛みなどがあります。これらがあればすぐに医療機関を受診してください。

ミレーナ（IUS）

ミレーナは、子宮内に装着することで避妊効果や婦人科疾患の改善が期待できる器具です。「避妊リング」とも呼ばれ、レボノルゲストレルという黄体ホルモンを子宮内で継続的に放出します。これにより、子宮内膜の増殖が抑えられ、受精卵の着床が防げるだけでなく、膣内の粘液の性状が変化して精子の通過も妨げられます。局所的な作用のため全身への副作用が少ない点も大きな特徴です。

ミレーナの仕組みと期待できる効果

• 子宮内膜を薄い状態に保ち、受精卵の着床を防ぐ（避妊効果）
• 経血量を減らし、月経痛を和らげる（月経困難症・過多月経の改善）
• 子宮内の粘液の性質を変えて精子の侵入を防ぐ
• 避妊効果は最長5年間持続します。
• ピルと違って服用の手間がないため、継続的な使用が容易です。

月経困難症や過多月経の治療では保険適用となっています（避妊目的の場合は自費）。

副作用について

• 月経周期の乱れや不正出血、下腹部痛などが起こることがありますが、時間の経過とともに軽減することが多いです。
• 稀に骨盤内炎症性疾患（PID）や子宮穿孔、子宮外妊娠などの重大な副作用が報告されています。

緊急避妊薬（アフターピル）

緊急避妊薬とは、避妊をしなかった、または避妊方法がうまくいかなかった際に、妊娠の成立を防ぐ目的で服用するお薬です。

期待できる効果

• 排卵を抑える、または受精・着床を防ぐことで妊娠を回避します。
• 性交後できるだけ早く服用することで効果が高まります。

処方可能なアフターピル

注意点・副作用について

• 頻繁な使用は避け、常用の避妊法と併用することが推奨されます。
• 性感染症の予防効果はありませんので、必要に応じてコンドームの併用も検討しましょう。
• 医師の診察・処方が必要となるケースが多いため、必要時は早めに受診することが重要です。
• 副作用としては、一時的な吐き気や頭痛、不正出血、乳房の張り、倦怠感などが報告されています。多くの場合は数日でおさまりますが、症状が強い場合や長引く場合はご相談ください。

避妊や月経管理、婦人科疾患の治療において、ピルやミレーナ、緊急避妊薬はとても有効な手段です。ライフスタイルや健康状態に応じて選択肢があり、自己判断で悩みを抱えるよりも、まずは専門医に相談することが大切です。当院では、女性のライフステージに寄り添った診療を行っております。どうぞお気軽にご相談ください。